信頼できるビジネスパートナーとしての存在
3年前からこれまでの変化
──弊社主催の2020年に行ったExecutive対談シリーズWebinarにご登壇頂いてから3年が経ちました。 当初、グループの駐在員は300名以上とのことでしたが、現状はいかがでしょうか?
当時より増えて、400名程になってます。色々と理由はありますが、新製品の立ち上げにかかわる生産準備のため、本社から駐在員を派遣してノウハウや新しい方針を伝える為に増員したのが主な理由になります。
──北米進出から50年以上経つ今、事業やそれを取り巻く環境をみて、どこにどういった機能が必要で、誰を派遣すべきか、といった検討フェーズで、本社が現地のニーズを聞き出すシステムは整えられつつある、とのことでした。また宮川さんご自身のお考えとして、そこに、ローカル社員の声を入れていく形が良いのでは?とのことでしたが、そのあたりは現状、いかがでしょうか?
ローカライゼーションを進めていかなければいけないっていう気持ちは、日本のトップに以前より芽生えてきていますが、日米の連携に関しては未だに責任と権限が結構ふわっとしてるっていうか、はっきり決まってない部分も多くあったりするのが現状ですね。3年前のウェビナーのなかでも言っていたと思うんですが、新しい事業や取り巻く環境が変わっていくなかで、我々も変わっていかなければいけないという意識は常にあります。我々製造業の核となる製品そのものに関わる核の部分は日本本社がしっかりと介入すべきだと思いますが、マネジメントや働き方などはよりローカル側に任せる方がいいのではないかとも思います。日本だとなかなか目に見えないし大事と思われていない部分がアメリカでは重要視されていたりする部分もあるので。アメリカにきたのであれば、アメリカのローカルメンバーのトップの人がやっていることを取り入れていこうという思考に変えていく事に対して、まだ溝があるんですよね。そういう形を作れないかっていうのを今少しずつ模索しつつ、やっていますし、そういう意味で言うと私が担当しているHRの部分は、その肝となる部分で、すごく大事ですよね。
──なるほど。駐在員も求められる役割、機能、スペックといった点では、3年前より変化はありましたか?
以前より日米間でコミュニケーションを取れるようになってきてはいて、例えばAWAっていう会社はローカルの社長がいるので、日本から赴任者が来るという時には、ローカル側から赴任者のスペックを要求すると、日本本社よりこの赴任者でいいですかという確認を経るフローができています。なので大きな齟齬が起きることはないですが、まだローカル側が遠慮をしてしまう側面があるのは否めないですね。そこをよりお互いコミュニケーションがよりスムーズにとれて、双方にとって適した駐在員が赴任できるようになるといいですね。
──その他に駐在員派遣・管理の点で、別の課題や考えていることなどありますか?
駐在員任期をもっとフレキシブルにすべきなのかもしれないなと思います。例えば3年ごとじゃなくて、プロジェクトリーダーとして1つの大きなプロジェクトを任されて赴任すると。その場合、そのプロジェクトが1年で終わるなら、お疲れ様でしたということで1年で帰ることもありだと思うんです。 一方で人事的に考えると、家族を帯同される方にそれを強いれるのかっていう側面もあって、難しいですよね。
駐在員のメンタルヘルス
──宮川さんご自身は日本で人事労務経験を10年、その後、米国へいかれましたよね。全ての駐在員が同様に駐在をポジティブなものと捉えることはなく、中には消極的な層もあるかと思います。働き方、駐在員のメンタルヘルスという点で、APSが管理されている点はありますか?
今まさにその点に関して突き詰められている状態です。駐在員の中には、文化や環境の違い、言葉の壁、体制の問題等、いろんな要素が原因となって、日本ではそつなくできていた仕事が思い通りにいかず苦しんでしまうことがあるんですよね。そういう状態を見つけるタイミングが今は遅いのではないかなと思いますね。気づけるタイミングが、もう会社に行けない、そういうレベルまで来てやっと見つかるっていう形ではなく、それをいかに早い段階で察知して緩和していくのか、そもそも根本的な問題を解決できるようにしないと、とか、そういうことをまさに考えてますね。
──なるほど。そこを考えていく中で宮川さんとして思うところは何かありますか?
駐在員のマインドセットといいますか、考え方も大事ですね。アメリカにきたからには頑張らんといかんって多くの人がみんな思います。その頑張り方が時として果たして本当に自身にとって、周りにとっていいことなのかと思うことがあるんです。例えばローカルの人は、基本的には、決まった時間まで仕事して帰ります。これは責任がないということではなく、こちらでは”当たり前”のことなのです。それ以外でやるべきことがたくさんあるから。家族のことだったり、仕事以外のこともやらなければいけないことたくさんあるんです。仕事だけが人生じゃない。そう割り切ってますよね。 その中で駐在員は日本から来ているのでといって、ローカルの人が帰った後も頑張って仕事をする。この頑張りは結局自分たちの首を絞めることにならないのでしょうか。と。 オーバーワークによる心身疲労の蓄積はもちろんですが、結局その人が帰ることになった場合に、ローカルの人を2人雇いなおすのかわかりませんが、とにかく代えがきかないことにもなりますよね。代えがきかないような状況を作ることは、企業や組織において僕はいいことだとは思わないです。そこを改善する為には、駐在員もこちらの働き方に合わせたうえで、仕事をしていくべきではないかと思います。なかなかこの考え方を持ち、行動する(ローカルのように定時になったら帰る)のは正直なところ心苦しく感じてしまうこともありますが、そこを割り切っていかない限りは根底にある問題は解決しない気がしますよね。私自身は今それに近いやり方で働けていますが、この感覚をどうやって持たせられるか、難しいです。
駐在員の管理
──コロナが明け、多くの企業で働き方が変わりました。拠点により役割りが異なる中、様々な従業員管理のやり方と評価制度、給与システム、ベネフィット対応があると思います。ほしい人財獲得、リテンション対策のため、企業はトータルコンペンセーションとして勤務体系や評価システム、給与・ベネフィットを見直しを行っていますが、駐在員の管理にそれらはどのような影響をもたらしていますか?
ここもローカルと日本とで考え方の違いがあったりでなかなか難しいところがあります。例えばローカル社員に関しては、常に労働市場の中で獲得競争にさらされている為、給料の多い少ないであっさり去られてしまうこととかがあるんですね。その為、人材獲得・確保のためには周りの市場に合わせて都度見直していく必要が本来あるんですけど、日本ではこういった状況がなかなか理解されにくい実情があります。それは日本が持つ雇用・賃上げの考え方とアメリカが持つ考え方が異なるからなんですね。環境が違うので考え方が違うのは仕方がないことかもしれませんが、アメリカという場所でビジネスを行っていく以上はこちらの考え方に寄り添っていく必要性があると思うんです。日本本社のカルチャーや制度をそのまま適用するのではなく、アメリカの感覚を理解し取り入れていくことが必要だと思います。
──折り合いをつけるのは難しいですが、大事なポイントですね。APSさんとして今後どのような取り組みをしていきたいと考えていらっしゃいますか?
APSは税務だったりその保険だったり、そういったものをいかに効率的ににやっていくかっていう裏方仕事を出発点とした会社なので、我々が全面にでることがいいことなのかどうかっていうのも含めて、ちょっと難しいところはあるんですけれども。ただ400人の駐在員がいて、歴史で言えば40年30年駐在員を送り続けてはいるものの、先ほどお答えしたような文化とか環境とかそういったものとの違い、理解っていうのは、なかなか醸成するの難しいですよね。そこに関しての仕掛けとかサポートとかをしてるつもりではあるんですけど、実際それが形になってないとか、結果に表れてないっていうんだったら、やっぱりやり方を考えてかないといけないですね。駐在員の方々その違いに関する『当たり前』を理解して、もっと業務に集中できるような環境を作っていきたいですね。
AISINにとってのPASONAとは
──環境が変わったり、市場が変わっていく中での取り組みや考え方などお伺いしてきましたが、そういった目まぐるしい変化の中で、10年以上も継続して弊社パソナのサービスを利用頂いている理由はズバリなんでしょうか?
僕らにとってパソナさんはとても大切なパートナーっていう存在であることは間違いないです。パソナさん側からは我々が委託している業務の作業を効率化していく提案を色々と出してもらってますし、そこに対する効果や結果をきちんと出してきて頂いているので、とても信頼しております。 今、北米の環境において、ペイロールや経理業務という会社の中でいえば生命維持装置的な仕事で退職リスクを持つというのはとても怖いんですよね。なのでそこの部分の責任を実はパソナさんに押し付けているというか(笑)、負ってもらってですね、その意味って非常に大きくて、本当にありがたいと思ってます。僕らが自身で負ってしまったら、相当な労力をかけないといけないので。
──ありがとうございます。そういったお言葉をいただいて次にここはこんなことはできませんかと言っていただけた際にも臨機応変に、フレキシブルに、ご対応できればと思います。パソナに今後期待するところはありますでしょうか?
そうですね、これから先もよきビジネスパートナーとしてともに歩んでいくにあたり、より本音を言い合える関係になれたらいいなと思っています。我々委託する側とパソナさんという委託される側が常により良いビジネスや環境整備を一緒に考えていける間柄となってより信頼感を強めていきたいというか。やはり会社が分かれるとコミュニケーションをとるのって社内とは異なって多少難しくなるじゃないですか。なので、ここに敷居を作らず意見を聞いたり言い合える仲になっていきたいですね。それはパソナさんとだったらできると思ってるし、パソナさんはそういった事に応じてくれる相手だと思ってます。変化に対して敏感に対応して共に歩んでいけるパートナーであり続けたいと思ってます。
──いろいろとお話聞かせて頂きありがとうございました。弊社のミッション「お客様の成功のためのビジネスパートナー」として長年の経験を積んだプロフェッショナルであるカスタマーサクセス部門のカワタが担当としてついておりますが、今後も今ご提供のサービスの提案だけでなく、今抱えていらっしゃる課題に対してのご提案などより一層一緒に歩んでいければと思います。
僕、周りにパソナさんのことすごい宣伝してるんですよ。笑 本当にPASONAさんのサービスに間違いないですよって。笑 そう周りに言えるくらい、信頼してます。 今後も先ほども言った通りですが、敷居をなるべくなくして、コミュニケーションを密にとりながら、攻めのスタイルでよりよい環境を作り出していけるパートナーでありたいですね。ありがとうございます。
会社概要
Aisin Personnel Service, Inc.
事業内容 :
アイシングループ傘下の米国内 生産・営業・開発法人 計24社への駐在員派遣。医療保険、確定申告、ビザ更新などを企画・運営し、駐在員とその家族の米国生活をサポート。
※アイシングループは自動車部品製造・販売を主とした事業を北米内に展開しており、北米売上 約$6M USD、従業員数 約14,000人の規模を誇る。(22年度実績)
宮川氏は、北米統括会社の人事も兼務しており、ローカルHR・駐在員管理の双方の視点からアイシングループ北米内事業をサポートしている。