企業成長のカギはAIと人間性の融合にあり|HRテックカンファレンス2024レポート

「HR Tech Conference 2024」が9月14日~16日にラスベガスで開催されました。このイベントは、HRテクノロジー業界で最大規模を誇り、数万人の参加者と500社以上の出展が集まる、活気あふれる場です。世界中から集まった人事やテクノロジーの専門家が、最新のトレンドや投資機会を探しに来ており、特にAIとGenerative AIの進化が注目されています。 本イベントに参加した弊社CHRO徳丸が、イベントの模様や今後の人事・採用業界動向をお伝えします。

HRにおけるAIとGenerative AIの進化

近年、企業は社員のエンゲージメント向上を最優先課題とし、ビジネス成長に資する人事制度やコミュニケーションの改善に取り組んでいます。Generative AIは、従来の人事を変革し、業務の効率化だけでなく、働くことの意義を再定義する役割を果たしており、人材管理やタレントマネジメントにおいてもその効果が実証されています。

特に大きな変化として、AIエージェントを活用したバーチャルヘルプデスクの普及があります。以前はチャットボットによる自動化が主流でしたが、現在はAIが社員一人ひとりの悩みや課題にリアルタイムで対応できる環境が整いつつあります。これにより、より高度でパーソナライズされた体験が可能になり、企業が新しい技術を取り入れ、競争優位性を保つための取り組みが進んでいます。

中小企業と大手企業のギャップ

一方で、Generative AIの急速な普及が、大手HRシステム企業によるAIデータを扱う企業の買収を促し、中小企業との格差を広げています。多くのHR Tech企業が大手企業向けのサービスを中心に展開しており、中小企業がこの波に乗るには、まだ課題が多いのが現状です。ADPやUKGなどは中小企業向けのサービスを提供していますが、他の企業は「中小企業でも使えるが、基本は大手向け」といったスタンスが多く見受けられました。

私が参加して感じたのは、中小企業がこの新しい技術を導入し、自社の成長に結びつけるためには、技術の理解とともに、営業担当者にサービスを提供したいと思ってもらえるコミュニケーションも重要だということです。中小企業がAIを活用するためのツールやサービスを導入しやすくするための工夫が求められています。

組織運営の複雑化とアジャイルな人事戦略

アメリカも日本も、デジタル化、AI、サステナビリティ、新しい働き方などの多様な要因により、組織運営と人事が複雑化しています。企業は従来の階層型組織から、よりアジャイルな組織への移行が求められており、人事もこの変化に対応する必要があります。

特に注目されているのが「スキルベースのタレント採用と運用」です。AIを活用してスキルアセスメントを行うことで、候補者の潜在能力を見極め、最適な配置が可能になります。また、入社後の研修プランもAIがレコメンドしてくれるため、社員の成長を促進し、組織の持続可能性を高めることができます。さらに、柔軟な雇用形態を導入することで、必要なスキルを持った人材を外部から取り入れ、人材不足の課題を解消する戦略も有効です。

経営に求められる変革

このイベントを通じて、人事・組織の在り方を根本から見直し、経営者が積極的に変革に取り組むことの重要性を再認識しました。人とテクノロジーを融合させることで、社員のエンゲージメントを高め、生産性を向上させることができます。企業文化やパーパスが、社員や顧客を引きつける軸となるため、その点を強化し続ける努力も必要です。

現代のビジネス環境は非常に複雑ですが、変化に適応し、人財を大切にする組織を作り上げることが、長期的な競争力の源泉となります。テクノロジーの進化をうまく取り入れつつ、人間性を重視するアプローチで、持続可能な企業成長を目指していきたいと思います。

Kayo Tokumaru

執筆者:徳丸佳代 / Kayo Tokumaru
PASONA N A, INC. / Chief Human Resources Officer

UCLAを卒業後、パソナグループの米国法人パソナN Aに入社。リクルーターとしてのキャリアを重ねた後、在米日系企業を対象にした人材紹介・派遣サービスの要となるリクルーティング部を統括。その後、採用プロセス代行サービスの皮切りとなる数年に跨る大手製造会社 の大量採用プロジェクト責任者を務めるなど、新規事業立ち上げから既存事業の拡大・変革に携わる。2017年Corporate Planning部の立ち上げとともにVP of Corporate Planningに就任、パソナN A組織のトランスフォーメーションのリーダーシップを担い、人事・組織改革における過様々な取り組みを実施、2023年6月にCHROに就任し、現在に至る。SHRM Certified Professionalであり、SHRM Executive Network Memberとして、人事、組織開発・運営におけるトレンドを常に追い続けている。