職場のメンタルヘルスとウェルビーイング イベントレポート

2024年10月29日、東京のホテルオークラにて「職場のメンタルヘルスとウェルビーイング カクテルイベント」が開催されました。本イベントは、Pasona NA、コロンビア大学、One Mind at Work、ハイドリック&ストラグルズが共催し、50社以上の企業から60名を超えるエグゼクティブにご参加いただきました。参加者の方々は、職場におけるメンタルヘルスとウェルビーイングの重要性について深い議論を交わすとともに、企業として従業員の心の健康を支えるための実践的な戦略を共有しました。イベントの結びには、Pasona N A, Inc.のプレジデントである古代賢司氏により、今後の日本社会におけるメンタルヘルスの重要性を再認識するとともに、企業に、より一層の成長と安定をもたらすために従業員のメンタルヘルスは欠かせない要素であることが強調されました。
執筆者:Haruka Kokaze(小風 華香)LinkedIn
メンタルヘルスへの戦略的アプローチ
本イベントの主要なメッセージは、企業戦略におけるメンタルヘルスの重要性を再認識させるものでした。コロンビア大学のMental Health + Work Designラボのディレクターであり、One MindのCEOを務めるキャスリーン・パイク博士は、職場でのメンタルヘルス向上には科学的かつ戦略的なアプローチが不可欠であることを訴えました。特に、少子化による労働力の減少、激化する人材獲得競争、そして若年層のメンタルヘルスへの関心の高まりに対応することが急務であると指摘しました。また、低い従業員エンゲージメント(わずか6%)を踏まえ、予防的なメンタルヘルス対策を早急に導入する必要性を訴えました。
日本の労働環境と課題
現在、日本の企業はメンタルヘルス関連の問題により、年間6兆円以上の経済的損失を抱えています。しかし、そのうち、正式な戦略を有する企業は26%に過ぎず、予防策が十分に活用されていない現状があります。パイク博士は、「Mental Health at Work Index」というツールを紹介し、企業がメンタルヘルス施策を評価・改善するための基準を提供しました。
予防策の重要性
世界精神保健連盟理事長の秋山剛医師は、予防的アプローチの重要性を強調しました。従業員のメンタルヘルスを守るためには、一次予防(従業員教育)、二次予防(高ストレス従業員支援)、三次予防(持続的な雇用とレジリエンス)の三つのレベルでの取り組みが必要であり、特に心の不調がある従業員も、社会のアセット(人的資源)であり、コストではないとして捉える意識改革が鍵であると述べました。
経営陣の役割と文化の変革
今回の議論を通じて、企業の経営層がメンタルヘルスを戦略的な優先事項として位置づけ、組織文化をその方向に変革する必要性が明確になりました。企業が競争力を維持するためには、従業員の健康と幸福に対する投資が不可欠であり、経営層が率先して変革をリードすることが求められています。
今後の課題と提言
参加者は、職場におけるメンタルヘルス施策の強化と、従業員のウェルビーイング向上に向けた取り組みを推進することの重要性を再確認しました。特に、予防的なメンタルヘルス研修やストレス管理プログラムの導入が喫緊の課題として挙げられました。また、組織内でのスティグマ(偏見)を取り除き、オープンでサポート的なコミュニケーションを促進することが、企業文化改善における重要なカギであるという多くの意見が寄せられました。
まとめ
このイベントは、企業が職場でのメンタルヘルスを戦略的に改善するための重要な一歩となりました。今後、企業は従業員一人ひとりの健康を支えるために、予防策を強化し、リーダーシップを発揮し続ける必要があります。また、国際的なベストプラクティスを導入し、日本の文化や組織の特性に合ったメンタルヘルス戦略を構築することが、持続可能な成長と従業員エンゲージメント向上につながるでしょう。


