備品購入や修繕費は固定資産or費用?:De Minimis Safe Harborの活用法

執筆者:Mizue Sato (佐藤 瑞恵)
Professional Service Director, Pasona N A, Inc.
2015年入社

有形資産の取得や修繕費用を資産化するか(固定資産とするか)費用とするかは、状況や内容に依存する複雑な問題ですが、この判断を簡素化できる場合があります!

Sec. 1.263(a)-1(f) に基づくDe Minimis Safe Harborの選択です。これにより、一定の基準額 (De Minimis Threshold) 以下の支出を、内容に関係なく即座に費用計上できます。日本の税法にも少額減価償却資産は損金算入できるというルールがありますが、それと同じようなものです。

ちなみに、名前の意味は、De minimis=些細なこと(というラテン語の語句)と、Safe harbor=あらかじめ定められた一定の基準や要件を満たしている限り法令違反とならない安全範囲(直訳すると安全港)です。つまり、要件を満たせば一定金額以下は費用にしてもいいということです。

1.満たさないといけない要件

  • 毎年、納税者が連邦税申告書 (Federal tax return)(延長申請を含む)に「翌年度はこの規定を選択するという」声明を添付すること
  • 対象外(※1)の支出でないこと
  • 複数のアイテムを一つの請求書で購入する場合、アイテムごとの価格が記載された請求書のコピーを保存しておくこと
  • Applicable Financial Statement (AFS)(※2)の特別基準値を使用する場合は、会計ポリシー(de minimis expensing policy)を書面で保有していること
  • ※1 対象外支出:土地取得、在庫になる予定の購入、Sec. 1.162-3(d) に基づいて資産化を選択した予備部品 (standby emergency spare parts) など
    ※2 AFS:(1) SECに提出する財務諸表、(2) CPAの報告書が添付された監査済み財務諸表、(3) 連邦または州の政府機関に提出する財務諸表、のいずれか

    2.基準額(De Minimis Threshold)

    De Minimis 基準額は、納税者がApplicable Financial Statement(AFS)を持っているかどうかで異なります。AFSを持っている場合は5,000ドル、持っていない場合は2,500ドルです。

    De minimis Safe harbor election

    例: 会社Aが今年、各5000ドルのコピー機を50台購入し、総額250,000ドルを支払いました。サプライヤーの請求書には、総額とアイテムごとの価格が記載されています。以下の要件を満たせば、これらすべての購入を費用として計上し、税務目的でも全額を控除できます。

    各コピー機は独立単位で機能する
    会社Aは、監査済み財務諸表を毎年提出しており、5,000ドル以下の資産を費用として計上する会計方針を持っている
    年初(前年度Tax return時)にDe Minimis Safe Harborの選択を行った

    さいごに

    De Minimis Safe Harbor規則は、費用の資産化と費用計上の意思決定プロセスを簡素化し、特定のアイテムを即座に費用として計上する際の確実性を提供します。特定の条件下では、資産化するよりも即座に費用計上する方が、時間と管理の負担を軽減できます。条件を確認して上手に選択しましょう。

    《参考記事》
    Tangible Property Regulations – Frequently Asked Questions / IRS
    Increase in De Minimis Safe Harbor Limit for Taxpayers Without an Applicable Financial Statement / IRS

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