【10/19/2026】「日本人を採用したい」は問題?―採用差別で130万ドル和解

EEOCの採用差別案件から考える、在米日系企業の募集要件と選考基準
エグゼクティブサマリー
米雇用機会均等委員会(EEOC)は2026年10月5日、フロリダ州で家具販売店19店舗を運営するEl Dorado Furnitureが、採用差別に関する調査を解決するため、対象となる応募者に総額130万ドルを支払うことで合意したと発表した。EEOCは、同社が全社的にヒスパニック系の応募者を優遇し、それ以外の応募者を採用しなかった疑いに合理的な根拠があると判断した。合意には、採用方針の改定や採用担当者への年次研修も含まれる。出典:EEOC発表
在米日系企業にとっても、日本語力や日本本社との調整力をどう採用要件に落とし込むかは、身近な課題である。「日本語で業務を遂行できること」と「日本出身であること」は異なる。必要な能力を具体的に定義し、応募者の背景にかかわらず同じ基準で確認することが、公平な選考と適切な人材の確保につながる。
何が起きたか―採用慣行の見直しを伴う解決
今回の調査で対象となったのは、2022年11月から2026年2月までの採用慣行である。EEOCは、同社がすべての職種についてヒスパニック系の応募者を優遇し、白人・黒人などヒスパニック系以外の応募者を採用しなかった疑いに合理的な根拠があると判断した。
本件は、裁判所が違法性を確定した判決ではなく、EEOCによる調査後、訴訟前の調整手続きを通じて解決した案件である。会社は金銭の支払いに加え、採用方針・ガイドラインの改定、差別防止方針の維持、募集・採用に関わる従業員への毎年の研修などに合意している。出典:EEOC発表
この事例を自社の採用に置き換える際は、求人票の文言だけでなく、応募から採否決定までの運用全体を確認したい。採用担当者、本社の面接官、人材紹介会社の間で、求める人物像が異なっていれば、文書上の基準と実際の選考にずれが生じる可能性がある。
日系企業の採用に置き換える―必要な能力を具体的にする
在米日系企業では、日本語での報告書作成、日本本社との会議、日米の関係者間の調整などが必要な職務もある。EEOCの指針では、英語以外の言語についても、職務を適切に遂行するために必要な場合に限り、語学力を要件とすることが認められる。ただし、求める水準は、その職務に必要な範囲に即して検討する必要がある。出典:EEOC指針「Fluency Requirements」
例えば、本社向けに日本語の資料を作成する担当者を採用するなら、どのような資料を、どの程度の頻度・正確さで作成するのかを整理する。その上で、職務に即した課題や面接質問によって能力を確認すれば、選考の根拠が明確になる。
一方、「日本人なら本社の意図が分かるだろう」「日本出身ではないので調整は難しいだろう」といった判断では、出身国によるステレオタイプ判断でリスクが高く、人の経験や能力を十分に確認できない。次のように、漠然とした人物像を、実際に確認できる要件へ置き換えることが有用だ。
| 漠然とした人物像 | 職務に即して確認する内容の例 |
|---|---|
| 日本語が堪能な人 | 日本語で担当業務の説明、メール作成、資料読解ができるか |
| 本社とうまくやれる人 | 意見の異なる関係者を調整し、合意につなげた経験があるか |
| 日本の商習慣が分かる人 | 担当業務に必要な承認手続きや取引実務を理解しているか |
| 社風に合う人 | 職務上必要な協働や報告・相談の行動を具体的に説明できるか |
※上記は採用基準を整理するための例であり、今回の和解案件で使用された表現ではない。
採用実務への示唆
自社の採用を点検する際は、次の四点から着手したい。EEOCも、客観的な評価基準の文書化と、応募者への一貫した適用を推奨している。出典:EEOC指針「Promising Practices」
募集要件は、具体的な業務から逆算する:
「日本語必須」とする場合は、使用する場面、頻度、必要な水準を明確にする。社内の一部の業務で日本語を使うという理由だけで、異なる職種にも一律の要件を適用していないか確認したい。必須条件と、入社後に習得できる条件を分けることは、候補者の幅を広げる上でも役立つ。
面接では、同じ能力を同じ基準で確認する:
主要な質問と評価項目を事前に決め、応募者に共通して用いる。「話しやすい」「本社が好みそう」といった印象だけで判断せず、説明力、調整経験、専門知識など、職務に関係する内容を評価する。採否理由も、その評価に沿って記録する。
人材紹介会社への依頼内容も点検する:
求人票と併せて、メールや打ち合わせで伝える条件も確認したい。「日本人を優先してほしい」という依頼を、「日本語で月次報告を作成できる人」「日米間のプロジェクト調整経験がある人」など、必要な能力・経験に置き換える。EEOCの指針は、特定の出身集団に限った紹介依頼をしてはならないと明記している。出典:EEOC指針「Recruitment」
本社・現地・拠点間で、採用基準を共有する:
採用に関わる人が、それぞれ異なる意味で「日本語力」や「本社との相性」を捉えていないか確認する。面接前に職務内容と評価基準を共有し、選考後は評価の根拠をすり合わせる。候補者への説明にも一貫性が生まれ、入社後の期待のずれを防ぐことにつながる。
Pasona N.A.にご相談ください
日本語力や本社との調整力を、どのような募集要件・評価項目として整理するか。採用活動の見直しを検討されている企業様は、Pasona N.A.へご相談ください。
本記事は2026年10月19日時点の公表情報に基づく一般的な情報提供を目的としており、個別案件への法的助言を行うものではありません。具体的な採用要件や選考運用の適法性については、米国の雇用法に詳しい弁護士等にご確認ください。
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